最終更新 2023/3/10
ミナミハンドウイルカはインド洋~西太平洋の温帯から熱帯に生息します．沿岸にスポット状に個体群を形成し，各個体群は遺伝的に閉鎖的な傾向があります．しかし，稀にその個体が生まれた個体群から遠く離れた海域で見つかることがあります．体の形と同じく，動物の行動もより多くの子を残せるものが生き残り進化してきたはずです．一方で，この移出は誰にどのようにメリットがあるのかわからない非常に興味深い行動です．
ここでは，沿岸で発見されたハンドウイルカ属鯨類を随時まとめていきます．
論文やニュース，SNS等を情報源として，公開されているもののみをここに反映しております．
文献もニュースもまだまだ調べきれていません．
ここでハンドウイルカ属っぽい個体見つけたよ！なんて情報もお待ちしております．
以下にまとめている以外に，何か情報があったらぜひ教えてください．
1. 複数頭が複数年以上確認されている海域
・東京都 利島：20頭（佐藤ら 2021）．御蔵島由来（Tsuji et al. 2017）．個体識別調査実施中．
・東京都 御蔵島：110-160頭（小木 2013）．個体識別調査実施中．
・東京都 八丈島：個体数不明．
・東京都 伊豆鳥島：26頭（森阪ら 2013）．継続調査は恐らくなし．
・東京都 小笠原群頭：200頭前後（森 & 岡本 2013）．個体識別調査実施中．
・式根島：（文献調査中）
・能登島：9頭（森 2013）．
・九州 天草下島：100頭以上（Shirakihara 2002）．個体識別調査実施中．
・鹿児島県 錦江湾：40-50頭（Nanbu et al. 2006）．個体識別調査実施中．
・鹿児島県 奄美大島：100頭以上（Funasaka et al. 2016）．個体識別調査実施中？
2. 単独~5頭以下での出現が一度でも確認されている海域
・千葉県勝浦市：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・千葉県鴨川市：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・千葉県館山市：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・東京都伊豆大島：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・東京都三宅島：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・東京都神津島：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・東京都地内島：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・三重県県熊野市：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・静岡県伊東市富戸：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・静岡県下田市田牛 神子元島：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・静岡県賀茂郡東伊豆町稲取：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・三重県県熊野市：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・和歌山県串本町：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・和歌山県田辺市：御蔵島由来（日付未公開）（Tsuji et al. 2017）．
・山口県下関市：ハンドウイルカ1頭（2019/4/4）→しものせき水族館が保護（北ら 2021）．
・宮関県延岡市：ハンドウイルカ1頭（2018/1/8）→大分マリーンパレス水族館うみたまごが保護（北ら 2021）．
・三重県尾鷲市 ハンドウイルカ（3/4）とミナミハンドウイルカ（1/4）のクオーター1頭と判明（2020/6）（北ら 2021）．
・福井県越前町． ミナミハンドウイルカ（雄）1頭．能登半島に定住していた雄個体，すずちゃんが移出した可能性．
イルカの"かみつき"1日6件・・・引きずり込まれ溺れる危険もじゃれないエスカレートか．（文春オンライン，2022/7/30，https://bunshun.jp/articles/-/56223 ）
かみつきイルカ「非常事態」続く 県警，チラシなど啓発開始．（中日新聞WEB， 2022/8/14，https://www.chunichi.co.jp/article/526459 ）
イルカにかまれた人は計20人に 被害続出の福井市、海水浴シーズン終了 来季もまた来る恐れ．（東京新聞，2022/9/2，https://www.tokyo-np.co.jp/article/199554 ）．けが人は7月上旬から出始め，県警の調べで20人を上回った．8/11には40代男性が両腕などの約10ヶ所を噛まれ，左手を14針縫うけが．
福井のかみつきイルカ、珠洲の「すずちゃん」か 背びれの特徴一致「温かく見守って」（北國新聞，2022/9/6，https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/844925 ）
・福井県美浜町．ハンドウイルカ属1頭．11月からイルカの情報相次ぐ．
サーフィンシーズンの海でイルカ目撃相次ぐ 今度は福井県美浜町…かまれる被害も、専門家「姿察知したらすぐ陸へ」．（2022/11/23，福井新聞，https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1674120 ）
引用文献
小木万布. （2013）. 御蔵島のミナミハンドウイルカ. 月刊海洋，45（5）, 215-225．
佐藤容子，小木万布，& 酒井麻衣．（2021）．2019年に利島周辺海域で観察されたミナミハンドウイルカ20頭の個体情報．Mikurensis, 10, 15-22．
森恭一．（2013）． 能登島のミナミハンドウイルカ．月間海洋 45（5），253-261．
森恭一， & 岡本亮介．（2013）．小笠原のミナミハンドウイルカ．月間海洋 45（5），226-231．
森阪匡通，関口雄祐，白木原美紀，篠原正典，小木万布，高輪奈々，正木慶子，森恭一，筒井浩俊，打込南友子，酒井麻衣，幸島司郎 & 吉岡基．（2013）．伊豆鳥島のミナミハンドウイルカ．月刊海洋，45（5）, 232-243.
Funasaka, N., Okabe, H., Oki, K., Tokutake, K., Kawazu, I., & Yoshioka, M. 2016. The occurrence and individual identification study of Indo-Pacific bottlenose dolphins Tursiops aduncus in the waters around Amami Oshima Island, southern Japan: a preliminary report. Mammal study, 41(3), 163-169.
Nanbu, Y., Hirose, J., Kubo, N., Kishiro, T., & Shinomiya, A. (2006). Location and number of individuals of Indo-Pacific bottlenose dolphins (Tursiops aduncus) in Kagoshima Bay [Japan]. Memoirs of Faculty of Fisheries-Kagoshima University (Japan).
Shirakihara M, Shirakihara K, Tomonaga J, Takatsuki M (2002) A resident population of Indo- Pacific bottlenose dolphins (Tursiops aduncus) in Amakusa, western Kyushu, Japan. Marine Mammal Science 18,30–41.
Tsuji, K., Kogi, K., Sakai, M., & Morisaka, T. 2017. Emigration of Indo-Pacific Bottlenose Dolphins (Tursiops aduncus) from Mikura Island, Japan. Aquatic Mammals, 43(6), 585-593.
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